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注文住宅の断熱対策|断熱材の選び方と気密性のポイント解説

注文住宅の断熱対策|断熱材の選び方と気密性のポイント解説
快適に暮らせる注文住宅を実現するには、断熱対策をしっかり講じることが欠かせません。2025年4月には新築住宅の省エネ基準適合義務化が予定されており、断熱性と気密性の重要性はますます高まっています。
この記事では、注文住宅における断熱対策のポイントを紹介。断熱材の種類と選び方、気密性、断熱等級や省エネ基準のことなどを詳しく解説します。
目次
主な断熱材6種類の特徴と選び方
断熱対策として多く用いられるのが断熱材です。断熱材は大きく分けて「繊維系断熱材」と「発泡プラスチック系断熱材」の2つがあり、素材の違いによって、さらに細かく分けられます。住宅でよく用いられる6種類の断熱材を比較してみましょう。
・主な断熱材6種類の比較
分類 | 素材 | 断熱性 | 防火性 | 環境性 | 価格 | |
繊維系断熱材 | 無機質系 | グラスウール | △ | ◎ | ◯ | ◎ |
ロックウール | △ | ◎ | ◯ | ◎ | ||
木質繊維系 | セルロースファイバー | △ | ◯ | ◎ | ◯ | |
発泡プラスチック系断熱材 | ウレタンフォーム | ◎ | ◯ | △ | △ | |
ポリスチレンフォーム | ◯ | ◯ | △ | ◯ | ||
フェノールフォーム | ◎ | ◯ | △ | △ |
表のとおり、断熱性の高い断熱材ほど価格も高くなる傾向にあります。また、使われる素材によって防火性や環境性にも違いがあるため、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解して選ぶことが大切です。
断熱材の選び方
断熱性だけで比較すれば、発泡プラスチック系断熱材のほうが優れているものの、どれもグラスウールやロックウールの2〜3倍程度の価格となっており、予算とのバランスも考慮する必要があります。
使用する場所によっても、選ぶべき断熱が異なります。発泡プラスチック系の断熱材は防火性が高くなく、特にウレタンフォームは燃えると有毒ガスを発生する可能性があるため危険です。日常的に火を扱うキッチンなどでは、火に強い無機質系の断熱材の使用をおすすめします。
窓・サッシの断熱性能
住宅の断熱性能を高めるうえで重要なのが、窓ガラスやサッシの断熱性能です。YKK APのデータによると、アルミフレーム・複層ガラスの窓を採用している住宅の場合、室内外を出入りする熱エネルギーのうち、窓を通して出入りする熱の割合は冬で50%、夏で74%にもなるといいます。窓の断熱性が低いと、室内の空気が外気の影響を大きく受けるため、冷暖房効率も悪くなるでしょう。
日本の住宅で多く用いられてきたアルミサッシは、安価で耐候性に優れていることなどがメリットとして挙げられます。一方で断熱性能が低く、結露しやすい点が欠点です。
窓の断熱性能を高めるには、次の2つの方法が効果的です。
- サッシを樹脂製、もしくはアルミと樹脂との複合サッシにする
- ガラスを複層ガラス(二重ガラス、三重ガラス)にして、ガス入りのものを選ぶ
上記の2つを組み合わせれば、さらに高い断熱性能を期待できるものの、標準的なアルミフレームの窓に比べて費用が高くなる点は要注意です。
(出典)YKK AP「窓の断熱がもたらす効果とは?-窓の断熱リフォーム費用についても紹介」https://www.ykkap.co.jp/consumer/reform/columns/5108
気密性の重要性
断熱性能を高めるには、断熱性だけでなく気密性を高めることも大切です。気密性とは、家の中から外部につながる隙間をできる限りなくし、室内の空気を閉じ込める性能をいいます。
気密性が高いと、室内における冬場の暖かい空気や夏場の涼しい空気を外に逃さずに済むので、外気温に関係なく一定の温度を保ちやすくなります。断熱性を高めて外気の影響を受けにくくしたうえで、高気密で快適な温度の空気を外に逃さないようにするという流れです。
年中快適に暮らせる住環境の実現には、断熱性・気密性をセットで考えることが欠かせません。
外断熱(外張り断熱)と内断熱(充填断熱工法の違い)
住宅の断熱方法には「外断熱」と「内断熱」の2種類があります。2つの断熱を簡単に比較したのが次の表です。
・外断熱と内断熱の違い
外断熱(外張り断熱) | 内断熱(充填断熱工法) | |
断熱性 | 高い | 低い |
気密性 | 高い | 低い |
初期コスト | 高い | 安い |
ランニングコスト | 抑えやすい | 高くなりやすい |
外観への影響 | 大きい | 小さい |
断熱性や気密性では外断熱に軍配が上がるものの、初期コストや外観への影響を重視するのであれば内断熱のほうが向いています。外断熱は断熱性・気密性に優れているため、住まいにかかるランニングコストを抑えやすく、長期的な視点でいえば経済的でしょう。
下で解説するように、外断熱と内断熱にはそれぞれ異なるメリット・デメリットがあるため、希望条件や予算に応じて適したほうを選ぶのがおすすめです。
外断熱(外張り断熱)とは?
外断熱とは、文字どおり建物の外側から断熱する方法です。木造や鉄骨造の戸建て住宅における外断熱は「外張り断熱」と呼ばれ、壁内において柱の外側に断熱材を設置します。柱も断熱材によって外気から切り離される形になり、建物全体が断熱材に覆われるのが特徴です。そのため、高い断熱性と気密性を実現できます。
ただし、内断熱に比べて資材費や施工費が高くなりやすいことに加え、施工不良による経年劣化や耐震性の低下に注意が必要です。
内断熱(充填断熱工法)とは?
建物の内側から断熱する内断熱のうち、木造や鉄骨造の戸建て住宅で用いられる工法は「充填断熱工法」と呼ばれます。壁の内側に断熱材を設置するのは外張り断熱と共通ですが、充填断熱工法では、柱と柱の間に設置するのが特徴です。日本では標準的な断熱方法であり、施工のしやすさやコストの低さなどが魅力となっています。
一方、柱との間に隙間ができたり、柱を通して熱の出入りが生じたりするため、外張り断熱に比べると断熱性能は劣ります。
断熱性能を表す断熱等級と省エネ基準
建物の断熱性や気密性を客観的に評価するため、断熱性能には基準となる数値や等級が設けられています。ここでは、代表的な基準であるUA(ユーエー)値とηAC(イータエーシー)値、断熱等級について見ていきましょう。
UA値とηAC値
断熱性能を表す数値としてよく用いられるのが、「外皮平均熱貫流率(UA値)」と「冷房期の平均日射取得率(ηAC値)」です。
外皮平均熱貫流率
(UA値) |
室内と室外における熱の通り抜けやすさを表す値 |
冷房期の平均日射取得率
(ηAC値) |
夏場における室内への日射熱の入りやすさを表す値 |
UA値が低いほど室内外の熱の出入りが少なく、ηAC値が低いほど夏場の日差しによる熱が室内に届きにくいことを表します。つまり、どちらの数値も小さい住宅ほど、断熱性能が高いということです。
断熱等級と省エネ基準
UA値とηAC値を地域ごとの基準に沿って、7つの等級で評価したものが「断熱等性能等級(断熱等級)」です。この指標は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)によって定められています。
2つの指標の数値によって等級1〜7まで設けられており、断熱等級7が最も高い断熱性能を表します。政府は、断熱等級4を「次世代省エネ基準」としています。2025年4月以降に着工する新築住宅では、省エネ基準適合の義務化が予定されており、今後注文住宅を建てる際は断熱等級4を満たす家づくりが必須といえるでしょう。
また、2030年以降は断熱等級5以上(ZEH水準)へと基準が引き上げられる予定となっていて、高断熱・高気密の重要性はますます高まる見込みです。
地域ごとの断熱対策
断熱等級を評価するにあたり、基準となるUA値とηAC値は地域によって異なっています。全国を寒冷度や温暖度によって8つの区分に分け、それぞれの地域の気候に応じた基準値を定めているのです。温暖な地域になるほどηAC値の基準が厳しくなり、反対に寒冷な地域になるほどUA値の基準は厳しくなります。
ユピテルはうすが展開する明石市や神戸市中心部のほか、大阪や東京などは区分6に分類されます。区分6での等級4(省エネ基準)、等級5(ZEH水準)のUA値とηAC値は次のとおりです。
・区分6における断熱等級の基準値
UA値(W/(M2・K) | ηAC値 | |
断熱等級4 | 0.87以下 | 2.8以下 |
断熱等級5 | 0.60以下 | 2.8以下 |
充填断熱工法、外張り断熱で断熱等級4を満たすためには、どれくらいの断熱材を施工すれば良いのでしょうか。必要厚の目安を示したものが以下の表です。
・区分6において断熱等級4を満たすための断熱材の厚さ目安
(単位:mm) | 屋根 | 壁 | 外に接する床 |
充填断熱工法 | 105〜240 | 50〜115 | 75〜175 |
外張り断熱 | 90〜210 | 40〜90 | 55〜130 |
(出典)TagTag「省エネ基準の断熱材とは?地域別の必要厚さについてもご紹介」
https://tagtag.hokkaido-gas.co.jp/portal/ecolife/facility/3127
上記の値はあくまでも目安であり、設置する断熱材の性能によって厚さは変動します。ただ、外張り断熱のほうが薄くても効果が高いということはわかるでしょう。
断熱と結露対策
断熱は結露の防止にも効果を発揮するでしょう。
そもそも結露は、室内の暖かな空気に含まれる水蒸気が、外気で冷やされた窓ガラスなどに付着し、水に変化することで発生します。空気には、水分を保持できる量の上限(飽和水蒸気量)があり、気温が上がるほど上限値も多くなる性質があります。窓ガラスなどで空気が冷やされると飽和水蒸気量が小さくなるため、保持できなくなった水蒸気が水へと変わるのです。
「たかが結露」と思うかもしれませんが、結露を放置すると柱や床の木材が腐ったり、カビが発生したりして、住宅が劣化する原因になるので注意が必要です。住まいの断熱性や気密性を高めると、窓ガラスなどが外気の影響を受けにくくなるため、室内外の温度差を抑えられて結露対策になります。
ただし、高断熱・高気密であっても、室内の空気に水蒸気が大量に含まれていると結露が発生するケースも考えられます。加湿器の使い方を見直す、換気やサーキュレーターで室内の空気を循環させるなど、室内に水蒸気を溜めない工夫も必要です。
断熱リフォームのポイント
ここまで注文住宅を建てる前提で解説してきましたが、後からリフォームで断熱対策を強化する場合のポイントも簡単に紹介します。
費用と工期にも気を配る
断熱性や気密性を高めようとすればするほど、高い費用と長い工期がかかります。自宅を断熱リフォームする場合、予算が限られるうえ、工事に時間がかかると生活に影響が出かねません。断熱リフォームでは、新築時以上に費用と工期にも配慮して断熱方法を選びましょう。
断熱を施す範囲を決める
断熱リフォームはすべての場所に施さなければいけないわけではありません。リビングダイニングや水回りなど、よく使う部屋や寒い部屋に限ってリフォームしても、十分な効果を得られるケースがあります。費用を抑えたいなら、事前にリフォーム会社へ相談し、部分的なリフォームで対応できないか確認してみるとよいでしょう。
補助金制度を上手に活用する
断熱リフォームでは、国や自治体の補助金制度を活用できる可能性があります。例えば、2024年度に実施の「先進的窓リノベ2024事業」では、窓ガラスや外窓の交換、ガラス交換などの断熱リフォーム工事に対して、1戸あたり最大200万円の補助金が交付されます。使える補助金制度がないか事前に確認し、できるだけ費用を抑えましょう。
まとめ
注文住宅の断熱対策においては、断熱材の選定、高断熱な窓・サッシの導入など、ポイントを押さえた建材選びが重要です。2025年4月以降は省エネ基準適合が新築の条件となるため、マイホームの検討時は断熱対策も忘れずに考えるようにしましょう。
とはいえ、具体的にどの対策をとるべきなのか判断がつかない方もいるかもしれません。そんなときは住宅会社へ早めに相談するのがおすすめです。
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