Columnコラム
構造計算とは?建物の安全性を支える基礎知識
日本は地震の多い国です。地震から家を守るためにも、強い構造を持つ家を建てる必要があります。そのためには、構造計算を行うことが重要ですが、そもそも構造計算がどのようなものかご存じでしょうか。
ここでは、構造計算とは何かについて詳しく解説していきます。
構造計算って何?
構造計算とは、建物を建てる際に、その建物が安全に使えるかどうかを数値で確かめるための計算のことです。
家は地震や台風、雪など様々な力がかかります。構造計算ではこれらの力が建物にどのような影響を与えるかを計算し、その建物が安全に耐えられるかどうかを確かめるためにおこなわれます。
構造計算が重要な理由
構造計算が重要な理由は、建物の半壊や全壊を防ぐためです。
建築基準法では、以下のような建物に対して構造計算を行うことが義務付けられています。
- 鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物
- 木造3階建て以上の建物
- 木造建築物で延床面積500㎡を超えるもの
- 木造建築物で建物の高さが13mを超えるもの模式は、軒の高さが9m超えるもの
建物によっては4号特例により構造計算が不要なものもありますが、2025年4月には4業特例の縮小により建築確認申請において構造計算の提出が求められます。
この内容については後述いたしますので、ご覧ください。
構造計算で検討する項目
構造計算で検討する項目には、以下の3つがあります。
- 壁量の検討
- 部材の検討
- 地盤・基礎の検討
それぞれの項目について詳しく説明していきます。
壁量の検討
壁量とは住宅の耐力壁が持っている、地震や風に抵抗するための強度のことです。家全体を支える役割があるため、構造の安全上で大きな役割を担っています。壁量計算をすることで、家が地震や風に耐えられる家であるかどうかを数値で確認が可能です。
壁量の計算は、家の構造を構成する壁の量や種類、配置などを総合的に評価します。具体的には、耐力壁の数、種類、配置、柱の接合方法などを考慮して計算されます。
部材の検討
部材の検討とは、木造住宅の骨組みである柱や梁の組み方、大きさを決めることです。家の重さをもとに、柱・梁・垂木・棟木・土台などの設計を行います。
地盤・基礎の検討
地盤・基礎の検討とは、家全体を支えられるかの地盤の調査をし、地盤にあった基礎の設計ができているかを確認します。
そのためにも地盤調査を行い、調査内容にあった地盤補強工事、基礎設計が重要です。
構造計算が行われない理由
先に述べたように、建物の種類によっては構造計算書を提出しなくても建築確認申請の審査が行われます。そのため、住宅会社によっては構造計算を行わない会社もあります。
なぜ、構造計算が行われないのか、その理由を見ていきましょう。
コストが高くなるから
構造計算を行う場合、費用が高くなります。相場では50〜60万円程度のコストアップです。また計算にも時間がかかるため、その分の人件費も発生することにもなります。
そのため、お金も時間もあまりかからない簡易的な壁量計算で済ませていることが多いのです。
建築基準法を誤解しているから
現行の建築基準法では、壁量計算書の提出は求められていません。また、建築士が家の設計を行っていれば、構造計算はしなくても良いと誤解されていることも時々あります。
そのため、簡易な計算で済ませて、構造計算を行わずに家を建ててしまうのです。
木材の強度がわからないから
構造計算では、部材の検討をする際に使用する木材の強度を調べなければなりません。しかし、日本では強度がはっきりわかる構造材があまり多く流通していません。
JAS(日本農林規格)に「目視等級」と「強度等級」の2つの基準があります。
強度等級の基準をクリアした構造用集成材であれば、基準がはっきりしているので計算も可能です。しかし、通常の木材は「目視等級」で取引されており、見た目が綺麗な木材が高値で取引されます。目視等級の木材では強度が曖昧なため、「構造計算がなりたたないのでは?」と懐疑的になっている方も多いです。
2025年4月には4号特例の縮小で構造計算が義務化
2025年4月から、家を建てる際に構造計算が義務化されます。これまで、ある程度の規模以下の住宅では、構造計算が必ずしも必要ではありませんでした。しかし、一部の住宅で強度不足の問題が起きたため、法律が変わり、2025年4月以降に建築予定の住宅で構造計算を行うことが求められるようになりました。
なぜ構造計算が義務化されたのでしょうか?それは、過去に、構造計算をせずに建てられた住宅で、地震などで倒壊してしまうケースがあったからです。この法律の変更によって、これから家を建てる方は、必ず構造計算を行わなければなりません。
まとめ
構造計算は、地震などの災害に強い家を作るためにも重要な計算です。これまでは簡易の壁量計算で終わらせていた構造計算も、2025年4月には構造計算書の提出が求められます。
家を建てる際には「構造計算をお願いします」と住宅会社に要望を伝え、最適な家づくりをしてもらうことが重要です。
なぜなら、全ての住宅会社がそういうわけではありませんが、構造計算をしっかりと行われていない企業がまだいるためです。
安心して長く住める家を建ててもらうためにも、構造計算をしっかりとしてもらうようにしましょう。